介護を受けながら暮らす人にとって、お風呂には危険がたくさんあります。特に古いお風呂では、一つひとつの動作に負担を感じ、お風呂に入ること自体が億劫になってしまう人も少なくありません。介護を受ける側だけでなく、介護をする人にとっても使いやすいお風呂にリフォームすることが大切です。そこで、今回はお風呂の介護リフォームのポイントをお伝えします。
お風呂の介護リフォームは重要
お風呂は、身体を清潔に保つための場所というだけでなく、日々の疲れを取りリラックスして過ごすための大切な場所でもあります。ところが、特に浴槽に入るということ自体が要介護の人にとっては危険を伴いやすいのです。転倒してけがをしたり、おぼれてしまったりするリスクが高く、浴槽に入ることを諦めているという人もいます。また、床が滑りやすかったり段差が大きかったりするお風呂も危険ですね。
介護をする人、される人の目線に立ってみると、お風呂の中にはたくさんの危険があることがわかりますが、リフォームすることによってこれらを回避することができます。お風呂に入ることを諦めてしまう前に、介護リフォームをすることで安全で使いやすいお風呂に変えるという視点を持ってみませんか。
要介護者にとって使いづらいお風呂とは
では、介護が必要な人にとって、どのようなお風呂が使いづらいのか考えてみましょう。まず、入り口の部分に段差があることで、つまづきやすくなります。床がツルツルした素材の場合は滑って転倒することも考えられますね。浴槽が深すぎてまたぐことができない、手すりのような掴めるものや支えがなく体勢を変える時に体重をかけられず不安なお風呂も使いづらいです。
細かい部分では、蛇口の開閉がしづらく手先に力を入れる必要があったり、シャワーの位置が高すぎて立つ、座るの大きな動きを強いられるお風呂も困難でしょう。車いす生活の人にとっては、ちょっとした段差があるだけでも、また狭いお風呂の場合身動きがとれなくなってしまいます。このような体勢移動するのが難しいお風呂では介護が必要な人にとってストレスだけでなく、恐怖すら感じる場になってしまうのです。
介護する人にとって使いづらいお風呂とは
介護される人だけでなく、介護する人にとってもお風呂が使いづらいことは問題です。お風呂で体重を支え切れなかったときに転倒や溺水の危険があるため、不安を感じながら介護することになってしまいます。やはり、段差や滑りやすい床、深くまたぎづらい浴槽では支えながら慎重に入浴させなければなりません。
手すりがないことで、全体重を支えなければならないというのも非常に大きな負担になるでしょう。そして、何よりも狭いお風呂では介護自体が難しくなってしまいます。大人が二人で洗い場にいても、無理なく体勢を変えられるほどの広さがなければ、入浴させることは現実的に厳しいでしょう。
介護リフォームで安全で快適なお風呂に
このような問題を解決するためにも、お風呂を介護仕様にリフォームすることを強くお勧めします。介護リフォームでは補助金の申請もできますので、上手に活用して介護される人もする人も不安やストレスが減るようなお風呂にリフォームしましょう。お風呂自体を変えることで、それまで浴槽に入ることを諦めていた人も、入ることができるようになるかもしれません。
諦めていたことが一つでもできるようになると、生きる喜びを感じられるのではないでしょうか。ましてや、お風呂は日常生活のことです。お互いの負担が軽減されることで、入浴の頻度も増やせるかもしれません。どのようなリフォームを行うかについては、介護の必要な度合いが人それぞれ異なるのでケースバイケースです。具体的なリフォーム内容に関して、考えられるものをご紹介していきます。
手すりの設置や扉の付け替え
まず必須とも言えるのが、「手すりの設置」です。浴槽に出入りするときに掴んで体重をかけられる手すりがあるのとないのとでは、安心感が違います。浴槽内で体勢を変えるために付けるという人も多いですね。手すりを設置する位置は、使用する人次第で様々なパターンが考えられますが、出入り口付近や浴槽内、浴槽と洗い場の間に設置するというケースが多いです。
また、リフォームする際には扉の付け替えも検討してみましょう。浴室の出入り口が広くなれば、車いすでの入浴や大人二人での出入りもスムーズになります。十分にスペースを確保できる場合は力をかけずに開閉できる引き戸がおすすめです。お風呂の内側だけでなく外からも開けやすい仕様の扉を選ぶことが大前提です。さらに排水機能を高めたうえで段差を解消するリフォームも行えるといいですね。
使いやすい浴槽に
浴槽が高すぎる場合、またぐ際に大きな負担を感じてしまいますので、リフォームで低くするといいでしょう。一般的なお風呂の高さを60㎝から40㎝に変えるだけでもまたぎやすくなります。また、半埋め込み式と呼ばれる設置方法で、浴槽の1/3を床に埋め込むということもできます。
さらに、浴槽の縁が狭いとまたぐことしかできませんが、縁が広いお風呂の場合いったん腰掛けることができますので、ラクに出入りすることができるでしょう。浴槽に傾斜があるお風呂も、段差が小さくなり入りやすく、入ってからも身体が傾斜に沿う形で安定します。浴槽内に段差があり腰掛けられるタイプのものを選ぶのもおすすめです。出入りの際の段差も小さくなりますし、入ってからの体勢も無理がないでしょう。
シャワーキャリーやバスリフト
リフォームで取り付けるというものとは少し違いますが、あると便利なものとしてシャワーキャリーもおすすめです。シャワーキャリーとは浴室用の車いすのことですが、座ったまま移動できるので、体勢をスムーズに変えることができます。浴槽に入るときもシャワーキャリーに座った状態で足から入るように移動すれば、体重移動がラクにできるので介護する人にとっても負担が軽減されます。車いす生活で自宅で入浴するという場合には、ぜひ導入したいアイテムです。
また、さらに本格的な介護器具としてバスリフトというものもあります。こちらは、浴槽に出入りするときに電動で乗り降りをサポートするもので、介護する人が体重を支えられないという場合などに役立ちます。
床材の見直しやヒートショック予防
介護の必要性に関わらず、滑りやすい床は誰にとっても危険です。転倒など事故が起こる前に早急に床材を見直しましょう。最近では、水はけもよく滑りにくい素材で作られた床が多くのメーカーから出ており、ユニットバスの標準装備にもなっています。
さらに、滑りにくいだけでなくヒヤッとしない素材を選ぶといいでしょう。特に冬場はお風呂が寒いとヒートショックを起こしやすいので注意が必要です。温度差を小さくするためにも、裸足で踏んだ時に冷たくない床を選ぶとともに、浴室暖房をつけることも検討してみて下さい。脱衣所との温度差がない温かいお風呂は、誰にとっても安全で快適です。
まとめ
介護が必要な人にとっても、介護をする人にとっても、お風呂が使いやすくなれば負担もストレスも大幅に減るはずです。使いづらいお風呂をリフォームすることで、家族にとって日々の暮らしが少しでもラクになることが大切です。介護リフォームの内容は各家庭の状況によって異なりますので、ケースワーカーやリフォーム会社と相談しながら、快適で使いやすいお風呂にリフォームしましょう。